2017年09月29日

★★妊娠と気分障害

女性が妊娠したとき、双極性障害だと躁状態や抑うつ状態が50%に生じ、反復性うつ病だと40%に生じるといいます(Di Florio et al., 2013)。抗うつ薬で治療されていたうつ病の女性が妊娠したとき、薬を中断すると68%が再発し、薬を継続すると再発率は26%で済んだといいます(Cohen et al., 2006)。

出産とは無関係に精神科を初診した女性のうち4%がその後の15年間で双極性障害に診断が変更され、出産のタイミングで精神科を初診した女性は14%がその後の15年間で双極性障害に診断が変更されたといい、産後うつ病の入院患者は後に双極性障害だと判明する率が2.16倍だったといいます(Munk-Olsen et al., 2012)。

母親がうつ病だと、早期分娩のリスクが1.37倍になるといいます(Grigoriadis et al., 2013)。母親がうつ病のとき、早期分娩のリスクが1.39倍、低出生体重のリスクが1.49倍、子宮内胎児発育遅延のリスクが1.45倍になるといいます(Grote et al., 2010)。

児の知的機能の若干の低下が、妊娠中の抑うつ(Barker et al., 2011; Evans et al., 2012; Koutra et al., 2013)や、不安(Buss et al., 2011)によってもたらされる可能性が指摘されています。
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2017年09月26日

薬の副作用ではないジスキネジア プロ向き

口などが動き続けてしまう不随意運動ジスキネジア統合失調症抗精神病薬で治療する際に生じやすいことは知っておかなければなりません。ジスキネジアは抗精神病薬の副作用として生じることがあります。

ただ、必ずしも「ジスキネジア=薬の副作用」とは言えないことに注意が必要です。そもそも、抗精神病薬が世に登場したのが1952年のことですが、緊張病のひとつとして1919年には Kraepelinがその詳細を記述しており(Lerner & Miodownik, 2011)、統合失調症に伴う不随意運動は1900年以前から確認されており、これから抗精神病薬を使い始めようという初発の統合失調症の4%にジスキネジアがすでに存在しているといいます(Fenton, 2000)。

ジスキネジアと統合失調症.jpg.jpg

抗精神病薬を大量に長期間使用したとき、その副作用でジスキネジアが生じることには注意すべきなのは当然のこと。ただ、定型を避けて非定型の抗精神病薬を選択し、少量しか使っていないときに生じたジスキネジアについては、薬の副作用ではなく本人の持つ何らかの神経学的な脆弱性が背景にあった可能性を想定すべきなのかもしれません。
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2017年09月14日

パニック症の評価

DSM-5に基づいたパニック発作パニック症について、問診の負担を減らすために問診票を作ってみました。自動的に診断が下されるような作りにはしてません。患者(と思われる人)に書いてもらったものを参考に医師が診察して診断の助けになればと思います。
パニック障害問診票.pdf

パニック症の重症度を数値化するものとして、パニック障害重症度尺度:Panic Disorder Severity Scale (PDSS)があります。通院する患者に記入させて状態を把握するのに有用です。患者自身が外来受診のたびに記録をつけて主治医に見せるのも有用でしょう。

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精神医学を学ぶ人への推薦図書

精神医学を学ぶ上で有用な本を紹介いたします。ここでは主に精神科医を主な対象と設定し、(精神科に興味のある)学生、若手の精神科医、ある程度の経験年数のある精神科医の3段階に分けて★をつけましたので、参考にしていただければ幸いです。

なお、この記事は良書の紹介を目的としており、このページにおいてアフィリエイトの類は一切していないことを明記しておきます。



■統合失調症

統合失調症のみかた,治療のすすめかた -
統合失調症のみかた,治療のすすめかた -
『統合失調症のみかた、治療のすすめかた』中外医学社
★☆☆初期研修医・医学生
★★★若手精神科医
★★★ベテラン精神科医
統合失調症について、この一冊を読み通したら基本から専門的内容までわかる本……そんな本が日本に無いと気付き、私自身が書き上げました。「統合失調症の赤本」と覚えてください。ただ統合失調症の患者を前に薬を処方しているだけでは気づけない、本当に目指すべき道筋を明確にしめしたつもりです。この本を読めば、統合失調症の治療はもっと面白くなるはず。電子版もあります。

過感受性精神病 治療抵抗性統合失調症の治療・予防法の追求 -
過感受性精神病 治療抵抗性統合失調症の治療・予防法の追求 -
『過感受性精神病』星和書店
☆☆☆初期研修医・医学生
★☆☆若手精神科医
★★☆ベテラン精神科医
日本の統合失調症治療は、多剤大量で治療されてきた(つい最近までの)過去があり、それがなぜ問題かを理解するのに有用な本です。小難しい本ですが大した量ではありません。統合失調症をよく診ることのある精神科医はぜひ理解しておくべき概念です(そして、統合失調症が沢山いる病棟の看護師も目を通しておくといいかもしれません……それには基本的な知識がある必要がありますが)。

統合失調症 -
統合失調症 -
『統合失調症』医学書院
☆☆☆ 初期研修医・医学生
★☆☆若手精神科医
★★★ベテラン精神科医
統合失調症について、非常に詳しく書かれた分厚い本。通読は非常に困難。何度も手に取って詳しく学ぶための本です。精神科医の本棚に一冊あるといいでしょう。


■気分障害(うつ病+双極性障害)
気分障害ハンドブック -
気分障害ハンドブック -
『気分障害ハンドブック』メディカルサイエンスインターナショナル
★☆☆ 初期研修医・医学生
★★★!若手精神科医
★★★!ベテラン精神科医
精神科の外来を訪れる最多は気分障害。そんなうつ病や双極性障害の診断や治療について解説された本です。抑うつ状態を診てなんとなく抗うつ薬を処方してみるだけの診療ではなく、きちんと診断し、きちんと治療を段階的に試みる考え方がわかりやすく解説されています。読みやすい魅力的な文章で書かれており、丸ごと一冊通読できる一冊といえます。精神科専門医の試験対策にもなります。「気分障害の赤本」と覚えてください。
若手の精神科医にも、ある程度の経験をすでに有している精神科医にもおすすめできます。精神科をしっかり学ぼうと思う研修医も、精神科研修中に読んでしまうといいかもしれません……何科に進んでも、必ずうつ病患者には常に出会うのですから。

気分障害 -
気分障害 -
『気分障害』医学書院
☆☆☆ 初期研修医・医学生
★☆☆若手精神科医
★★★ベテラン精神科医
気分障害について、非常に詳しく書かれた分厚い本。通読することは困難で、ある程度、気分障害について理解している人が、さらに詳しく学ぶための本です。精神科医の本棚に一冊あってほしい本です。

■不安障害
不安障害診療のすべて (精神科臨床エキスパート) -
不安障害診療のすべて (精神科臨床エキスパート) -
『不安障害診療のすべて』医学書院
☆☆☆初期研修医・医学生
★★★若手精神科医
★★☆ベテラン精神科医
パニック障害や全般性不安障害、分離不安などの様々な不安障害について解説されています。分厚いように見えて十分、通読してしまえる文章量ですし、気になった項目だけ読んでも参考になります。精神医療に携わっていれば不安障害に対応する局面は多く、そんなときにはこの一冊を読んでおくと自信をもって適切な医療を提供できるはず。医学生や研修医に買えとは言いませんが、精神科医であれば持っておきたい一冊です。


■精神科診断/診断基準
DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引 -
DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引 -
『DSM-5』医学書院
☆☆☆(必読)初期研修医・医学生
★★★(必携)若手精神科医
★★★(必携)ベテラン精神科医
精神医療に関わる上で絶対に避けて通れないのが精神科の診断基準であるDSM-5をここで挙げるのは当たり前すぎるかもしれません。それは診断の過程をアルゴリズムにしたものであると同時に、その精神障害の特徴を理解する上でも役立つものです。精神科に関わるのであれば必ず持っておくべき本。小さな「デスクトップリファレンス」と、解説がふんだんに盛り込まれ非常に分厚く大きな本があり、専門家であれば大きな方も持っておきたいものですが、まずは小さな方を入手することからでしょう。


語呂で覚える!DSM‐5 -
語呂で覚える!DSM‐5 -
『語呂で覚える!DSM-5』メディカルサイエンスインターナショナル
★★☆!初期研修医・医学生:
★★★!若手精神科医
★★★!ベテラン精神科医
診断基準のDSM-5だけでなく、精神科に関する物事がざっくり解説され、覚えるための語呂をたくさん紹介した本です。診断基準を本棚やポケットに入れておいては、臨床の場面では効率が悪く、基準が頭に入っていなければきちんと診察の際に情報を集めることも困難になるものです。また、語呂で覚えてしまえば、その障害について容易に理解が進むはず。
精神科医であればぜひ覚えてしまうべきであり、ベテラン精神科医もこれまでうろ覚えだった領域に挑戦してほしいものです。研修医や看護師、医療系の学生であれば、DSM-5そのものをめくるのも面倒なものであり、ざっくりと解説されたこの本がDSM-5そのものよりも大いに役立つはずでしょう(比較すれば価格も安上がりだし)。


精神科診断戦略: モリソン先生のDSM-5徹底攻略case130 -
精神科診断戦略: モリソン先生のDSM-5徹底攻略case130 -
『精神科診断戦略: モリソン先生のDSM-5徹底攻略』医学書院
★☆☆初期研修医・医学生
★★★若手精神科医
★★☆ベテラン精神科医
様々な精神障害について丁寧に解説されている。多くの症例が提示されており、読み物としても面白く、すべてを通読するのは大変でも、開いたページからついつい読み進んでしまえる魅力的な一冊。DSM-5には無味乾燥な基準しかありませんが、この本を手にすれば各精神障害が生き生きとイメージできるようになり、それぞれについてより詳しくなれることでしょう。原著は業界で非常に人気のある名著"DSM-5 Made Easy"。特に精神科医に(精神科に興味のある医学生や研修医にも)オススメの一冊。


■薬物療法
本当にわかる精神科の薬はじめの一歩〜疾患ごとの具体的な処方例で、薬物療法の考え方とコツ、治療経過に応じた対応が身につく! -
本当にわかる精神科の薬はじめの一歩〜疾患ごとの具体的な処方例で、薬物療法の考え方とコツ、治療経過に応じた対応が身につく! -
★☆☆初期研修医・医学生
★★☆若手精神科医
☆☆☆ベテラン精神科医
『本当にわかる精神科の薬はじめの一歩』羊土社
初期〜後期の研修医や学生が読むのには非常に良い一冊。非常に読みやすく、最初に理解すべきことに的を絞って書かれています。精神科に進む予定がない研修医も、精神科の研修中に読み通しておくと、将来きっと役に立つでしょう。


ストール精神薬理学エセンシャルズ 神経科学的基礎と応用 第4版 -
ストール精神薬理学エセンシャルズ 神経科学的基礎と応用 第4版 -
『ストール精神薬理学エセンシャルズ』メディカルサイエンスインターナショナル
☆☆☆初期研修医・医学生
★★☆若手精神科医
★★★ベテラン精神科医
向精神薬の薬理について詳細に書かれた分厚い本。薬理は非常に難しい領域ですが、それでもストール先生の手にかかればこれだけわかりやすくなるものです……それにしても難しいかも。初期研修医や医学生が手にするには無理があります。精神科の道に進むと決めた後期研修医は早いうちに持っておくべきですし、精神科医の道をずいぶんと進んできた医師も、さらに学びを深めるために持っておきたい本です。

今日の精神疾患治療指針 第2版 -
今日の精神疾患治療指針 第2版 -
『今日の精神疾患治療指針』医学書院
☆☆☆初期研修医・医学生
★★★若手精神科医
★★★ベテラン精神科医
様々な精神障害につき、診断や治療の具体的内容がまとめられた分厚い一冊。疑問に思ったとき、困ったときに開くと非常に助かります。

■症候学
精神症候学 -
精神症候学 -
『精神症候学』弘文堂
☆☆☆初期研修医・医学生
★★★若手精神科医
★★★ベテラン精神科医
精神科の道に進むと、症状ひとつ扱ういも難しい用語のオンパレードです。そんなとき、この一冊が本棚にあると、その用語が何を意味するのかや、あなたが見た患者の症状は何という専門用語で言い表したものかを学ぶことができます。丸ごと一冊をぐいぐいと読み進めるには無理がありますが、興味があった(または必要が生じた)ところから少しずつ読んでいくうちに、症状を言い表す専門用語に詳しくなれることでしょう。初期研修医や医学生は……買わないことでしょう。しかし、医局の本棚にこの本があったら手にとるといいでしょう。そして、精神科の道に進む者は早いうちに持っておくべき本です。

■頭部画像
脳単―ギリシャ語・ラテン語 (語源から覚える解剖学英単語集 (脳・神経編)) -
脳単―ギリシャ語・ラテン語 (語源から覚える解剖学英単語集 (脳・神経編)) -
『脳単』エヌ・ティー・エス
★★☆初期研修医・医学生
★★☆若手精神科医
★★☆ベテラン精神科医
精神医学では必ず脳の話が出てきます。脳の各部位の名称や簡単な説明が分かりやすい図とともに示されています。学術的な本ではありませんが、学ぶ腕では非常に良い参考書といえます。
posted by ぷしこノート at 10:33| 精神科ブログ講義 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月07日

神経性やせ症の身体症状

神経性やせ症(いわゆる拒食症)の人は、髪の毛が抜けやすくなりますが、同時にうぶ毛が増え、5αリダクターゼの活性低下が影響していると考えられています(Glorio et al., 2000
毛とアノレキ.jpg

神経性やせ症の人は、コレステロール値が高い傾向にあるといい、これは体重が回復した際には正常化するといいます(Matzkin et al., 2006)。koresute.jpg

神経性やせ症では、甲状腺ホルモンが低下しており(Smorawińska et al., 2003)、甲状腺自体が萎縮しているといいます(Støving et al., 2001)。
アノレキと甲状腺.jpg

神経性やせ症では、栄養摂取の不足のみならず、嘔吐や下剤乱用に伴う電解質の喪失で、しばしば低カリウム血症が生じています。
アノレキ低カリウム.jpg

神経性やせ症では、しばしば過剰に活動する過活動が生じます。運動でさらなる痩せを求めるだけでなく、不快な気分の解消や、強迫性によるものと考えられています。
過活動.jpg

極端な拒食が続いた低栄養状態で、急に過量の栄養を再開すると低リン血症が生じ、リフィーディング症候群(再栄養症候群)という多臓器不全が生じることがあり、栄養は少量から再開して徐々に増量し、その際に血液検査でリンの値を繰り返し確認して補充しておく必要があります。
アノレキ再栄養.jpg

posted by ぷしこノート at 20:37| 精神科ブログ講義 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする