2012年03月30日

境界型人格障害 DSM-5 Draft

 DSM-5の草稿の「境界型障害」"Borderline Personality Disorder"を自分なりに日本語訳してみました。

DSM5_2012Mar30.pdfpdf_middle.gif

境界型人格障害 Borderline Personality Disorder DSM-5診断基準の草案

A. 以下の様に示される人格機能の重大な障害

1. 自己機能の障害(aまたはb)
a. 同一性: しばしば過度の自己批判と関連した、著しく貧困または発達不十分または不安定な自己像; 慢性的な空虚感; ストレス下での解離状態
b. 自己の方向性: ゴールや向上心や評価や人生計画の不安定性

そして

2. 対人機能の障害(aまたはb)
a. 共感: 対人的な過敏性(すなわち軽視あるいは軽蔑されたと感じる傾向)に伴う他者の感情と要求を認識する能力の問題; 否定的な特性や傷つきやすさに選択的に偏って他者を認識すること
b. 親交: 不信と、貧困さと、実際にあるいは想像上の見捨てられに伴う不安を伴った先入観に特徴づけられた、感情的で不安定でぶつかり合う緊密な関係; しばしば理想化とこきおろしの両極端な認識を持ち、そして巻き込みと立ち去りの間を揺れ動く緊密な関係


B. 以下の領域で示される病的な人格傾向

1. 否定的な感情の持ちやすさ
a. 感情の不安定性: 不安定な感情体験と頻繁に生じる気分の変化; 容易に興奮し、激しく、そして/または出来事や状況と不釣り合いな感情
b. 心配性: しばしば対人関係におけるストレスに反応して神経質さや緊張やパニックを強く感じること; 過去の不幸な体験と将来の否定的な可能性が負の影響を及ぼすことへの悩み; 不確実なことに脅威や不安、恐怖を感じること; 駄目になる、あるいは制御を失うことへの恐怖
c. 分離不安: 過度の依存と自立性の完全な欠如に伴う恐怖に関連した、重要な他者に拒絶される、そして/または離れることへの恐怖
d. 抑うつ: 落ちた、みじめな、そして/または絶望的な気持ちが頻繁に生じる

2. 以下によって特徴づけられる抑えの無さ
a. 衝動性: 目前の刺激に反応した衝動的な行動; 結果への考慮や計画なしに即時的な考えに基づく行動; 計画を立案する、あるいは計画に則ることの困難さ; 切迫感と、感情的な苦痛のもとでの自傷行為
b. リスクテーキング: 危険で、損失が生じうる、そして潜在的に自己損害的な行動を不必要に、そして結果を考えずにとること; 自分の限界に対する認識を欠き、自分自身の危険の現実を否定すること

3. 以下によって特徴づけられる対立傾向
a. 敵意: 持続的あるいは頻繁な怒りの感情; 些細なことに反応した怒りや苛々、そして短気さ

C. 人格機能の障害とその個人の人格傾向の表れは、時間を通じて、そして状況を通じて比較的一定している。


D. 人格機能の障害とその個人の人格傾向の表れは、物質(例えば薬物乱用や薬物治療)または一般的身体疾患(例えば重度の頭部傷害)の直接的な生理学的作用によるものではない。


【ノート】
 DSM-IVからすると比べることも困難なほどに複雑になりました。他の疾患/障害の基準からすると複雑であると同時に表現が難解であり、日本語訳に苦心しました。どれだけ正確に訳せているか、自信は持てませんが参考まで。
posted by ぷしこノート at 19:32| 診断基準 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月26日

物質使用障害 DSM-5 Draft

 DSM-5の草稿の「物質使用障害」"Substance Use Disorder"を自分なりに日本語訳してみました。DSM-IVの日本語訳を参考にしました。

pdf_middle.gif
DSM5_2012Mar26.pdf


物質使用障害

 臨床的に重大な障害や苦痛を引き起こす物質使用の不適応的な様式で、以下の2つ(またはそれ以上)が、同じ12ヶ月の期間内のどこかで起こることによって示される。

1. 物質の反復的な使用の結果、仕事・学校または家庭の重大な役割義務を果たすことができなくなる(例:物質使用に関した欠勤の繰り返しや仕事の能率低下;物質に関連して学校を欠席したり、停学や退学になったりする;育児や家事を怠る)

2. 身体的危険のある状況で物質を反復使用する(例:物質使用による能力低下中の自動車の運転や機械の操作)

3. 持続的あるいは反復的な、社会的なまたは対人関係の問題が物質の影響により引き起こされたり悪化したりしているにもかかわらず物質使用が持続(例:中毒のため生じたことについての配偶者との口論、暴力を伴う喧嘩)

4. 耐性、以下のいずれかによって定義されるもの:
 a. 酩酊または希望の効果を得るために、著しく増大した量の物質が必要
 b. 物質の同じ量の持続使用により、著しく効果が減弱
 注:医療者の指示に基づいた鎮痛剤・抗うつ薬・抗不安薬・β遮断薬の服用は耐性とは扱わない。

5. 離脱、以下のいずれかによって定義されるもの
 a. その物質に特徴的な離脱症候群がある(特定の物質の離脱の基準AとBを参照)
 b. 離脱症状を軽減したり回避したりするために、同じ物質(または密接に関連した物質)を摂取する
 注:医療者の指示に基づいた鎮痛剤・抗うつ薬・抗不安薬またはβ遮断薬の服用は耐性とは扱わない。

6. その物質をはじめのつもりよりも大量に、またはより長い期間、しばしば使用する

7. 物質を中止、または制限しようとする持続的な欲求または努力の不成功のあること

8. その物質を得るために必要な活動、物質使用、または、その作用からの回復などに費やされる時間の大きいこと

9. 物質の使用のために重要な社会的、職業的または娯楽的活動を放棄、または減少させていること

10. 精神的または身体的問題が、その物質によって持続的または反復的に起こり、悪化しているらしいことを知っているにもかかわらず、物質使用を続けること

11. 特定の物質の使用に対する渇望・強い欲求または衝動


重症度についての特定
 中等度: 基準の2つか3つを満たす
 重度 : 基準の4つ以上を満たす

該当すれば特定せよ
 生理学的依存を伴うもの: 耐性か離脱の証拠がある(項目4か5が存在)
 生理学的依存を伴わないもの: 耐性や離脱の証拠がない(項目4も5も存在しない)

経過の特定用語
 早期完全寛解
 早期部分寛解
 持続完全寛解
 持続部分寛解
 アゴニストによる治療中
 管理された環境下にある

訳 @Psycho_Note


【ノート】
 DSM-IVにおける物質乱用と物質依存が物質使用障害として統合される見込みです。物質乱用の4項目のうち、違法性を問う項目を削除した3項目+物質依存の7項目+摂取欲求についての1項目を合わせた計11項目で診断することになっています。DSM-IVの依存症は3項目以上を満たしたものを診断したが、DSM-5の物質使用障害は2項目以上満たせば診断に至ることになり、以前よりも診断が広がったと言っていいでしょう。
posted by ぷしこノート at 18:00| 診断基準 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月19日

カタトニア DSM-5 Draft

DSM-5 Draftの"Catatonia Specifier"を自分なりに訳してみました。

pdf_middle.gifDSM5草稿2012Mar19.pdf

カタトニアを下に列挙した疾患の特定用語として扱うことを提案している。ただし、カタトニアの基準を満たしつつも、統合失調症や気分障害(Major mood disroder)、関連する一般身体疾患が存在しない場合には特定不能のカタトニアと診断することができる。

Catatonic disordersは、システムを横断する如く扱う。特定の疾患の特定用語として5桁目にコード番号をつけて扱われる。

295.x5 カタトニアを伴う統合失調症、統合失調症様障害あるいは統合失調感情障害
296.x5 カタトニアを伴うMajor mood disorder
293.89 カタトイアを伴う一般身体疾患
298.99 特定不能のカタトニア
29x.x5 物質誘発性精神病性障害
298.85 短期精神病性障害

カタトニアは下記の3つ以上で定義される。
1. カタレプシー
2. 蝋屈症
3. 昏迷
4. 焦燥
5. 無言
6. 拒絶症
7. 不自然な姿勢
8. 衒奇症
9. 常同症
10. しかめ面
11. 反響言語
12. 反響動作

【ノート】
DSM-IVでは妄想型・解体型・緊張型などの病型分類がありましたが、それらはDSM-5で削除される見込みです。そして、緊張型とされていたカタトニアが特定用語として、統合失調症だけでなく気分障害などに付け加えて扱われることとなりました。他に明らかな疾患なくカタトニアだけが生じるものは「特定不能のカタトニア」として扱われることとなります。"Major mood disorder"という語が出てきましたが、この語の日本語訳は公に定められておらず、日本語訳をこの場では避けました。おそらく大うつ病や双極性障害を意味するものと思われます。


posted by ぷしこノート at 19:54| 診断基準 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月07日

躁病エピソード DSM5 Draft

DSM-5 Draftの"Manic Episode"を自分なりに訳してみました。日本語訳されたDSM-IVを参考にしました。

pdf_middle.gifDSM5_manic.pdf

「躁病エピソード Manic Episode」 DSM-5診断基準の草案

A: 異常かつ持続的な高揚し・開放的または易怒的な気分、そして異常かつ持続的な増大した活動または活力が、一日のうち殆どほぼ毎日存在するいつもと違った期間が少なくとも1週間持続する(入院治療が必要な場合、期間は問わない)。

B: 気分の障害と活動・活力の増大の期間中、以下の症状のうち3つ(またはそれ以上、気分が単に易怒的な場合は4つ)がはっきりと認められる程度に、通常のふるまいからの変化として存在している。
1. 自尊心の肥大、または誇大
2. 睡眠欲求の減少(例えば、3時間眠っただけでよく休めたと感じる)
3. 普段よりも多弁であるか、しゃべり続けようとする心迫
4. 観念奔逸、またはいくつもの考えが競い合っているという主観的な体験
5. 注意散漫(すなわち、注意があまりにも容易に、重要でないかまたは関係のない外的刺激によって他に転じること)が報告されるか観察されること
6. 目標志向性の活動(社会的、職場または学校内、性的のいずれか)の増加、または精神運動性の焦燥
7. まずい結果になる可能性が高い活動に熱中すること(例えば制御のきかない買いあさり、性的無分別、またはばかけた商売への投資などに専念すること)


C: 気分の障害は、職業的機能や日常の社会活動または他者との人間関係に著しい障害を起こすほど、または自己または他者を傷つけるのを防ぐため入院が必要であるほど重篤であるか、または精神病性の特徴が存在する。

D: エピソードは物質(例: 乱用薬物、投薬、あるいは他の治療)の直接的な生理学的作用、または一般身体疾患によるものではない。注: 抗うつ治療(薬物療法やECT等)の期間中に、躁病エピソードに完全に合致し、そしてそれがその治療の生理学的作用を超えて持続することは、躁病エピソードと診断する十分な根拠となる。しかしながら、1つか2つの兆候(抗うつ治療に続く、増強した怒りっぽさ、苛々、焦燥感)は躁病エピソードと診断する十分な根拠とは扱わない様に注意すべきである。
訳 @Psycho_Note


posted by ぷしこノート at 18:54| Comment(0) | 診断基準 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする