2013年10月29日

月経前不快気分障害(PMDD)問診票

 月経前に生じる身体・精神の変調の強いものは月経前症候群(Premenstrual Syndrome:PMS)と医療で扱われることがあり、その中でも精神の症状が強いものは診断基準DSM-5で月経前不快気分障害(Premenstrual Dysphoric Disorder:PMDD)と定義されています。
 精神科医でも、PMS/PMDDを専門に扱っているのでもなければ、その症状は覚えきることが困難で、感覚的に診断されがちです。そこで、より簡便に、同時に正確に診断するための補助として使うことのできる問診票を作成しました。問診票だけで判断せず、記載したことを医師が臨床的に判断する必要があります。医師が臨床の場で使うもよし、「私、もしかしてPMDD?」と思う方が自ら記載して医師のもとに持っていくのもよし。ご活用いただければ幸いです。

月経前不快気分障害 問診票.pdf


posted by とある精神科医 at 19:07| 質問紙 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月27日

アルツハイマー病にココナッツオイル

認知症食事療法と言えば、様々なビタミンを十分に摂るべく野菜・果物を豊富に摂り、ω3不飽和脂肪酸であるEPAやDHAの類を摂るべくを食べ、お茶をよく飲むこと、そこまでが医学として妥当性が十分に検証され一般的に薦められるものです。サプリメントとしてイチョウの葉エキスが売られており、その効果の有無のついては議論の余地はありますが、試してみる価値はあるでしょう。そして、お茶のアミノ酸のテアニンのサプリメントは、まだ実証が不十分ですが、イチョウの葉エキス以上の期待をしていいだろうポテンシャルを持っていると私自身は確信しています。

そんな中、アルツハイマー型認知症ココナッツオイルが良いと薦めている本があります。調べれば、ラットの実験でココナッツの成分を摂取することによりアルツハイマーで生じるアミロイドβ等が減ったとする報告は見つかりました。しかし、医学の世界でまだ一般的とは言い難いこと。ただ、本の内容自体は十分に説得力のある内容であったので簡単に紹介しましょう。



よく糖尿病を語る上で登場するインスリン、血糖を下げるホルモンと知られていますが、正確には血液中の糖分を細胞の中に引きこむホルモンです。このインスリンへの反応性がアルツハイマー型認知症の頭では下がっていることが分かっています。そして、この本では、血液中から糖分を引き込みエネルギー源として使用できなくなったアルツハイマー病の脳細胞に、糖分の代わりのエネルギーとなるケトンを与えることによって脳機能を回復させることができると説明しています。脳にケトンを与える上でココナッツオイルが良いとこの本では薦めています。この本の著者は医者です。アメリカの小児科医ですが、比較的早くに認知症を発症して思い悩む中、情報を集める中でココナッツオイルにたどり着いたとのこと。

 

本の中でも紹介されていますが、ココナッツオイルのサプリメントは存在しますが、摂取すべき量からすると高価であり、ココナッツオイルそのものを買う方が現実的でしょう。10〜20g/日の摂取を目指したいとしています。ただ、下痢傾向には注意。そのまま飲むのも無理ではありませんが、料理に使う方が現実的かもしれません。クックパッドで検索すればココナッツオイルを用いたレシピが沢山得られます。お試し程度に、まずはトーストに用いるだけでもいいかもしれません。また、オイルばかりと言わずココナッツ関連であれば効果は期待でき、ココナッツのお菓子を食べるのも有意義なことでしょう。



著者の夫、そしてその話を知りココナッツオイルを試した人たちからの反響で本は構成されており、大規模な研究が行われているわけではありません。ですから、医学界で認められている内容ではありません。ただ、自分がアルツハイマー型認知症の始まりであったならば、あるいは家族がアルツハイマー型認知症であったならば、ココナッツオイルを食事に取り入れてみたいと、少なくとも個人的には、そう思える内容でした。少なくとも試す価値はあるだろうと。もし、これにより効果が得られる人が出てくるとしたら嬉しいことですね。
posted by とある精神科医 at 21:53| Comment(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月09日

統合失調症 DSM-5,DSM-IV,DSM-III,DSM-II,DSM-Iの診断基準

 2013年5月にDSM-5が発表され、DSM-IVとの違いが語られる中で、DSM診断の過去について統合失調症(精神分裂病)の基準で振り返ってみました。
 DSM-IDSM-IIについては日本語訳が見つからず、私自身の訳です。DSM-Iは1952年、DSM-IIは1968年に発表されています。統合失調症の特徴をポイントでおさえて診断する「操作的診断」が試みられたのは1972年のセント・ルイス基準が初めてのこと。そして、1980年に発表されたDSM-IIIで統合失調症のDSM診断に操作的診断が加わりました。


 出発点のDSM-Iから始まり、DSM-II/-IIIを見比べてみると、DSM-5はまだ完璧とは言えずともかなり進歩したものだとは言えそうです。


DSM-I Schizophrenic Reactions

 これは、感情・行動・知性の障害が様々な程度で混在して伴う、現実の関係性と概念の構成の基本的な障害で特徴づけられた、精神病性障害の一群を示す。その障害は、現実離れする強い傾向、感情の不協和、予測のつかない思路の障害、退行した行動、そして人によっては「悪化」の傾向で示される。(訳:@Psycho_Note)
It represents a group of psychotic disorders characterized by fundamental disturbances in reality relationships and concept formations, with affective, behavioral, and intellectual disturbances in varying degrees and mixtures. The disorders are marked by strong tendency to retreat from reality, by emotional disharmony, unpredictable disturbances in stream of thought, regressive behavior, and in some, a tendency to “deterioration.”



DSM-II Schizophrenia

 この大きなカテゴリには、思考・気分・行動の特徴的な障害として表れる一群の障害が含まれている。思考の障害は、現実の誤認、ときには妄想や幻覚、を引き起こすような、それはしばしば心理的な自己防衛として現れる、概念の構成の変化で示される。気分の変化は、両価的な、制約された、そして不適切な感情の反応、そして、他者への共感の欠如が含まれる。行為には、引きこもり・退行・奇妙なものがありうる。
 統合失調症は、基本的に思考障害によって生じる精神状態であり、大気分疾患は気分障害を主としている点で鑑別される。妄想状態は、現実の歪曲が小さく他の精神病症状を欠いている点で統合失調症と鑑別される。(訳:@Psycho_Note)
This large category includes a group of disorders manifested by characteristic disturbances of thinking, mood, and behavior, Disturbances in thinking are marked by alterations of concept formation which may lead to misinterpretation of reality and sometimes to delusions and hallucinations, which frequently appear psychologically self-protective. Corollary mood changes include ambivalent, constricted, and inappropriate emotional responsiveness and loss of empathy with others. Behavior may be withdrawn, regressive, and bizarre. The schizophrenias, in which the mental status is attributable primarily to a thought disorder, are to be distinguished from the Major affective illnesses (q.v.) which are dominated by a mood disorder. The Paranoid states (q.v.) are distinguished from schizophrenia by the narrowness of their distortions of reality and by the absence of other psychotic symptoms.



DSM-III 精神分裂性障害 Schizophrenic Disorders

A. 病相期に,以下のうち少なくとも1項目が存在すること:
 (1)奇異な妄想(内容が明らかに不合理で,実際に根拠があり得ないもの)。例えば被支配妄想,思考伝播,思考吹入,思考奪取のようなもの
 (2)身体的,誇大的,宗教的,虚無的,あるいはその他の妄想で,被害的あるいは嫉妬的内容をもたないもの
 (3)被害的あるいは嫉妬的内容の妄想が,どのような型であれ幻覚を伴っている場合
 (4)幻聴で,ある声が患者の行動や考えを逐一説明するものや,二つ以上の声が互いに会話しているもの
 (5)何度もおこる幻聴で,その内容は気分の抑うつや高揚とはっきりした関係がなく,一,二語より多いようなもの
 (6)滅裂,著しい連合弛緩,著しい非論理的思考,あるいは極めて貧困な内容の会話が,以下のうち少なくとも1項目に伴っている場合:
   (a)鈍麻した,平板な,あるいは不適切な感情
   (b)妄想または幻覚
   (c)緊張病性の,あるいは他のひどくまとまりのない行動

B. 仕事,人間関係,身の回りの始末等の面で,病前の機能水準から低下していること。

C. 持続期間:疾患の徴候が患者の人生のある期間で少なくとも6カ月間以上持続して存在し,現在も疾患の徴候のいくつかを示す。この6カ月間には上記Aの症状を示す活動期が含まれねばならないが,以下に定義する前駆期や残遺期は含むことも含まないこともある。



DSM-IV 統合失調症 Schizophrenia

A. 特徴的症状 以下のうち2つ(またはそれ以上)、おのおのは、1カ月の期間(治療が成功した場合はより短い)ほとんどいつも存在:
 (1)妄想
 (2)幻覚
 (3)まとまりのない会話(例:頻繁な脱線または滅裂)
 (4)ひどくまとまりのないまたは緊張病性の行動
 (5)陰性症状、すなわち感情の平板化、思考の貧困、または意欲の欠如
注:妄想が奇異なものであったり、幻聴がその者の行動や思考を逐一説明するか、または2つ以上の声が互いに会話しているものであるときには、基準Aの症状を1つ満たすだけでよい。

B. 社会的または職業的機能の低下:障害の始まり以降の期間の大部分で、仕事、対人関係、自己管理などの面で1つ以上の機能が病前に獲得していた水準より著しく低下している(または、小児期や青年期の発症の場合、期待される対人的、学業的、職業的水準にまで達しない)

C. 期間:障害の持続的な徴候が少なくとも6カ月間存在する。この6カ月の期間には、基準Aを満たす各症状(すなわち、活動期の症状)は少なくとも1カ月(または、治療が成功した場合はより短い)存在しなければならないが、前駆期または残遺期の症状の存在する期間を含んでもよい。これらの前駆期または残遺期の期間では、障害の徴候は陰性症状のみか、もしくは基準Aにあげられた症状の2つまたはそれ以上が弱められた形(例:風変わりな信念、異常な知覚体験)で表されることがある。

D. 失調感情障害と気分障害の除外:失調感情障害と「気分障害、精神病性の特徴を伴うもの」が以下の理由で除外されていること
 (1)活動期の症状と同時に、大うつ病、躁病、または混合性のエピソードが発症していない
 (2)活動期の症状中に気分のエピソードが発症していた場合、その持続期間の合計は、活動期および残遺期の持続期間の合計に比べて短い

E. 物質や一般身体疾患の除外:障害は、物質(例:乱用薬物、投薬)または一般身体疾患の直接的な生理学的作用によるものではない

F. 公汎性発達障害との関係:自閉性障害や他の公汎性発達障害の既往歴があれば、統合失調症の追加診断は、顕著な幻覚や妄想が少なくとも1カ月(または、治療が成功した場合は、より短い)存在する場合にのみ与えられる



DSM-5 統合失調症 Schizophrenia

A. 以下のうち2つ以上、各々が1ヶ月間(または治療が成功した際はより短い期間)ほとんどいつも存在する。これらのうち少なくともひとつは1か2か3である。
 1.妄想
 2.幻覚
 3.解体した会話(例:頻繁な脱線または滅裂)
 4.ひどくまとまりのないまたは緊張病性の行動
 5.陰性症状(例:感情表出の減少や意欲欠如)

B. 障害の始まり以降の期間の大部分で、仕事、対人関係、自己管理などの面で1つ以上の機能の水準が病前に獲得していた水準より著しく低下している(あるいは、小児期や青年期の発症の場合、対人的、学業的または職業的な期待される水準に達することができずにいる)。

C. 障害の持続的な徴候が少なくとも6ヶ月間存在する。この6ヶ月間には、基準Aを満たす各症状(すなわち、活動期の症状)は少なくとも1ヶ月(または治療が成功した際はより短い期間)存在しなければならないが、前駆期または残遺期の症状の存在する期間を含んでもよい。これらの前駆期または残遺期の期間では、障害の徴候は陰性症状のみか、もしくは基準Aにあげられた症状の2つまたはそれ以上が弱められた形(例:風変わりな信念、異常な知覚体験)で表されることがある。

D. 統合失調感情障害と、うつ病または双極性障害の精神病性の特徴を伴うものが以下の理由で除外されていること
 (1)活動期の症状と同時に、大うつ病または躁病のエピソードが発症していない
 (2)活動期の症状中に気分のエピソードが発症していた場合、それらは疾患の活動期および残遺期の持続期間の半分以下しか存在しない。

E. 障害は、物質(例:乱用薬物、投薬)または他の医学的状態の直接的な生理学的作用の影響によるものではない。

F. 自閉スペクトラム障害やコミュニケーション障害の小児期の既往歴があれば、統合失調症の追加診断は、統合失調症の必須症状に加えて顕著な幻覚や妄想が少なくとも1ヶ月(または治療が成功した際はより短い期間)存在する場合にのみ与えられる。
(訳:@Psycho_Note)


DSM-5の詳細については「統合失調症(統合失調症スペクトラム)の基準 DSM-5」をご覧ください。
posted by とある精神科医 at 18:29| 診断基準 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする