運動がうつ病治療の効果を持つ理由はいくつか考えられています。BDNF(脳由来神経栄養因子)が脳で増えると、うつ病が良くなることが分かっており、抗うつ薬で治療効果が上がったときには脳でBDNFが増えていることも分かっています。そして、運動をすることにより、脳内のBDNFが増加することも分かっています。運動は、抗うつ作用を持つのです。
また、多くの抗うつ薬の主な作用は脳のセロトニンに対するもの。運動でも、脳内のセロトニンが増えることも分かっています。運動で生じる遊離脂肪酸がアルブミンと結合していたトリプトファンと置換され、遊離トリプトファンが増えます。また、運動をすると、筋肉でBCAA(分岐鎖アミノ酸)がエネルギーとして消費され、血中のトリプトファン等のAAA(芳香族アミノ酸)の比率が上がります。血液中から脳へのアミノ酸の移行は競合しており、比率が上がったトリプトファンなどがより多く脳に移行します。これが脳でセロトニン(やメラトニン)に変化し、うつ病を改善させると考えられています。
うつ病の治療の際には、運動も併用するといいでしょう。ウォーキングやランニングでもいいでしょうし、スクワットや腹筋運動などの筋力トレーニングでも、運動習慣をつけるといいでしょう。
うつ病では億劫感が強まることは多く、自発的な運動が難しいこともあります。そんなときには、電気刺激で筋肉動かすEMS(アブトロニックの類)や、座っているだけで運動効果が得られる器具(ジョーバの類)は自発的な意思が無くとも運動効果でき、うつ病効果が得られると考えられます。
うつ病の治療の際には、薬物治療と並行して、できるのであれば何らかの運動を取り入れたいものです。
