2017年04月13日

ワルファリンと抗うつ薬 ブログで授業(プロ向け)

ワルファリンの添付文書には、三環系抗うつ剤、アミトリプチリン塩酸塩等、パロキセチン塩酸塩水和物、フルボキサミンマレイン酸塩が挙げられ「併用する場合には血液凝固能の変動に十分注意しながら投与すること」と記載されています。抗うつ薬とワルファリンを併用したとき、ワルファリンが効きすぎることがあることには注意が必要です。ではなぜ、ワルファリンの作用が強まるのでしょう。その理由を3つ語れるようになっておきましょう。

1)蛋白結合率
ワルファリンの血漿蛋白結合率は97%とされ(ワーファリン)、蛋白と結合しているワルファリンは不活性型となり、残りの数%が遊離型=活性型として作用しています。そして、抗うつ薬の蛋白結合率は、フルボキサミンが81%(デプロメール)、パロキセチンが93%または95%(パキシル)、デュロキセチンが97-99%(サインバルタ)、セルトラリンが98%(ジェイゾロフト)です。そのような蛋白結合率が高い薬剤が他にあると、蛋白結合率が高いと同時に蛋白と結合する力が弱いワルファリンのような薬剤は、遊離型が増え効果が想定以上に強まってしまいます。例えるならば「ワルファリンさんは、椅子に座りたがるわりに、椅子取りゲームに弱く、ライバルがいると立たざるをえなくなる」といったところでしょう。




2)チトクロームP450の阻害
ワルファリンは肝酵素チトクロムP450(CYP)の2C9によって代謝されます(ワーファリン)。フルボキサミンのCYP2C9阻害(デプロメール)により、ワルファリンの代謝が妨げられ血中濃度が上昇する可能性があります。
専門家であれば、フルボキサミンとパロキセチンが阻害するチトクロムP450のサブタイプを把握しておかなければなりません。
このことは精神科専門医試験(第7回)にも出題されています。

肝臓.png


3)抗うつ薬の血小板への作用
抗うつ薬は脳内だけでなく血小板でのセロトニンの動態にも作用し、血小板からのセロトニン放出が血管損傷に対する止血機構にも影響しています。セロトニンの再取り込みが阻害されれば、血小板では放出すべきセロトニンが枯渇し、出血傾向が助長される可能性があります。実際、SSRIの使用で消化管出血が増えたり(de Abajo et al.,1999)、心血管イベント後の再発が抗うつ薬で半分前後に減ったり(Coupland et al., 2016)するといいます。
血小板.png


 以上、1)パロキセチンなどの併用で遊離型のワルファリンの増加、2)フルボキサミンなどの併用でCYP2C9阻害によるワルファリン血中濃度の増加、3)抗うつ薬全般による血小板凝集能の低下、の3つがあることを知っておきましょう。

posted by ぷしこノート at 19:42| 精神科ブログ講義 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする