2017年08月18日

双極性障害に抗うつ薬? 患者から専門医まで

 双極性障害は、平常気分でいられる期間がおよそ半分程度で、残りの期間を双極T型であれば躁や軽躁の3.5倍の期間を抑うつで過ごし(Judd et al., 2002)、双極U型であれば軽躁の38.7倍の期間を抑うつで過ごすといい(Judd et al., 2003)、抑うつ状態が非常に多い病気です。
 双極性障害であれば気分安定薬で治療が行われるはずですが、抑うつ状態が多いことから抗うつ薬を使いたくなるもの。さて、双極性障害に抗うつ薬を使っていいのでしょうか。

 双極性障害の患者に抗うつ薬で用いたとき、状態が生じること(いわゆる躁転)が増えることを心配する医療者多いもの。ただ、気分安定薬で治療しているのであれば、抗うつ薬を追加しても躁転は増えないとする見かたもあります(Tada et al., 2015)。ただ、それも薬によって違うようで、躁転の率はプラセボに比して、三環系抗うつ薬やSNRIでは1.8倍前後、その他の抗うつ薬でも1.6倍近くだったといい(Allain et al., 2017)、注意が必要です。
 双極性障害への抗うつ薬の使用は急速交代を招く(Wehr et al.,
1988
; Ghaemi et al., 2000; Muraoka et al., 2016)、すなわち抗うつ薬が双極性障害を不安定にすることには注意が必要です。双極性障害に抗うつ薬を用いた際、治療誘発性希死念慮Treatment Emergent Suicidal Ideationが生じる可能性が指摘されている(Akiskal & Benazzi, 2006)ことにも注意が必要です。
 しかも、双極性障害を抗うつ薬で治療することに意味はないようです。気分安定薬で治療されている約360人の双極性障害の半年間経過を観たとき、抗うつ薬の併用で23.5%、プラセボの併用で27.3%が回復したといい、抗うつ薬併用の利点は認められなかったといいます(Sachs et al., 2007)。他にも、抗うつ薬の追加に効果は無かったとする報告はあります(Tada et al., 2015)。
 双極性障害への抗うつ薬の処方には「元気になりたい!/元気になってほしい!」という回復への思いはこめられていても、治療効果は無いというのが結論のようです。


双極性障害(やうつ病)の専門的な治療の理解を深めたい方は、ぜひ『気分障害ハンドブック』をお読みください。
posted by ぷしこノート at 16:37| 精神科ブログ講義 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする