2017年07月13日

双極性障害に抗うつ薬? 患者から専門医まで

 双極性障害は、平常気分でいられる期間がおよそ半分程度で、残りの期間を双極T型であれば躁や軽躁の3.5倍の期間を抑うつで過ごし(Judd et al., 2002)、双極U型であれば軽躁の38.7倍の期間を抑うつで過ごすといい(Judd et al., 2003)、抑うつ状態が非常に多い病気です。
 双極性障害であれば気分安定薬で治療が行われるはずですが、抑うつ状態が多いことから抗うつ薬を使いたくなるもの。さて、双極性障害に抗うつ薬を使っていいのでしょうか。

 双極性障害の患者に抗うつ薬で用いたとき、躁状態が生じること(いわゆる躁転)が増えることを心配する医療者多いもの。ただ、気分安定薬で治療しているのであれば、抗うつ薬を追加しても躁転が増えないとする見かたもあります(Tada et al., 2015)。ただ、それも薬によって違うようで、躁転の率はプラセボに比して、三環系抗うつ薬やSNRIでは1.8倍前後、その他の抗うつ薬でも1.6倍近くだったといい(Allain et al., 2017)、注意が必要です。
 双極性障害359名を調査したところ、抗うつ薬使用歴のある者うち10.6%に急速交代が生じ、抗うつ薬使用歴の無い者では2.3%しか急速交代が生じていなかったといい(Muraoka et al., 2016)、抗うつ薬は急速交代型への移行を招くことには注意が必要です。
 しかも、双極性障害を抗うつ薬で治療することに意味はないようです。気分安定薬で治療されている約360人の双極性障害の半年間経過を観たとき、抗うつ薬の併用で23.5%、プラセボの併用で27.3%が回復したといい、抗うつ薬併用の利点は認められなかったといいます(Sachs et al., 2007)。他にも、抗うつ薬の追加に効果は無かったとする報告はあります(Tada et al., 2015)。
 双極性障害への抗うつ薬の処方には「元気になりたい!/元気になってほしい!」という回復への思いはこめられていても、治療効果は無いというのが結論のようです。


双極性障害(やうつ病)の専門的な治療の理解のために『気分障害ハンドブック』をお読みください。
posted by ぷしこノート at 13:35| 精神科ブログ講義 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする