2017年05月11日

むずむず脚症候群 学生から専門医まで

夜、眠るとすると足がムズムズして動かさずにいられなくなることがあり、これは「レストレスレッグス症候群」「むずむず脚症候群」と呼ばれ、この概念を1945年に初めて提唱したAnders Ekbomの名から「エクボン症候群/エクボム症候群」とも呼ばれます。その通り「足がムズムズする」が主訴の人もいますが、ただ「眠れない」とだけ不眠を訴える人の中にもレストレスレッグス症候群の人がいることも少なくありません。そして、中には「足に寄生虫がいる」と訴える皮膚寄生虫妄想の人もおり、寄生虫の証拠だといって皮膚のかけらや糸くずを(古くはマッチ箱などに入れて)持ってくることがあり「マッチ箱徴候MatchBox Sign」と呼ばれます(Bouree et al., 2007)。5%の人に生じるといい、年齢を経るごとに頻度は上がり、女性の方が多い可能性が指摘されています。

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脚のムズムズと言えば、似たものに錐体外路症状のひとつであるアカシジアという概念があります。どちらも足がムズムズして、足を動かさずにはいられなくなるものですが、レストレスレッグス症候群は決まって夜に生じるもので、アカシジアは抗精神病薬によって誘発され、その時間帯は夜に限らない点で異なります。
ドパミン神経系の機能低下で生じるとされ、夜にドパミン神経系の機能が低下することで夜に症状が出現するものと考えられています。レストレスレッグス症候群の人、睡眠中には約80%で、睡眠時周期性四肢運動が生じます。

レストレスレッグス症候群の多くは続発性で、その背景には身体的な問題や変化が存在します。葉酸欠乏やビタミンB12の欠乏、マグネシウムの欠乏、甲状腺機能低下、胃切除などが背景に存在することもありますが、最も代表的なのは腎機能の低下や妊娠、そして、鉄欠乏でしょう。
ドパミンはチロシンから作られますが、その酵素の補因子に鉄があり、ドパミン受容体にも鉄があり、鉄不足はドパミン神経系に影響を与えます。

腎機能低下でレストレスレッグス症候群は生じやすく、eGFRが60以上では2%以下、60未満で5-6%ほど、15未満では23%にレストレスレッグス症候群が生じます(Miklos et al., 2005)。腎臓から分泌されるエリスロポエチンが低下すると、肝臓に貯蔵された鉄の輸送を阻害するヘプシジンが増加します。

胃の切除で胃酸が減り、鉄の吸収が落ち、レストレスレッグス症候群が生じやすくなります。妊婦の4人に1人にレストレスレッグス症候群が生じるといい(『精神科診断戦略』)、妊娠による鉄や葉酸の消費が原因と考えられます。

レストレスレッグス症候群の治療は、フェリチンなどで鉄の状態を把握するなど背景に背景に存在する基礎疾患を確認し、その基礎疾患の治療が最優先です。そして、対症療法としてドパミン作動薬が第一選択薬とされ(『今日の精神疾患治療指針』)、L-dopa、ベンゾジアゼピンなどが用いられます。

「眠れない」と聞いたらレストレスレッグス症候群の可能性を考え、レストレスレッグス症候群を診たら身体的な背景の存在を考えるべきでしょう。

ラベル:精神医学 睡眠
posted by ぷしこノート at 22:05| 精神科ブログ講義 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする