2017年08月17日

妊娠中のカフェインとADHD

妊娠中に摂取したカフェインは胎児に移行することが確認されています(河田ら, 2004)。カフェインによる催奇形性はほぼ無いと考えられるものの、その児への精神的な影響の存在があるかもしれません。

妊娠17週の時点でのカフェイン摂取で、子が18ヶ月の時点での不注意や多動の傾向が増していたといい(Bekkhus et al., 2010)、妊娠15週の時点でのコーヒー摂取が日に8杯以上の母親から生まれた子が11歳になったとき、注意欠如多動症:ADHDのリスクが1.47倍だったといいます(Hvolgaard Mikkelsen et al., 2017)。
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動物実験のレベルでも、妊娠中のラットにカフェインを与えたところ、生まれた仔の行動に変化が生じたといい(Hughes & Beveridge, 1990, Nakamoto et al., 1991)、妊娠中のカフェインは生まれてくる子どもに影響がありそうです。

ただ、「妊娠中にカフェインを摂ったか」だけで調べた報告ではADHDの発症リスクに一定のものはなく、おそらく一杯だけでもいけないという話ではないようです。

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2017年08月07日

日本の精神医学の歴史 看護やPSWの学生向き

それまで精神障害者は各家庭で私宅監置されていましたが、1900年には改めて私宅監置での監護の手続きを定めた「精神病者監護法」が作られました。精神障害者の保護に関する最初の法律でした。

ドイツで精神医学を学び、帰国した呉秀三が当時の日本を改めて見て嘆き「日本の精神障害者は、病気という不幸プラス日本に生まれた不幸で『二重の不幸』だ」と1918年に発言し、私宅監置ではなく病院で扱うべきとする1919年に「精神病院法」を作りました。
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しかし、実際には順に東京、大阪、神奈川、福岡、鹿児島、愛知、兵庫、京都の8ヶ所に精神科病院が作られただけで、全国的には精神科病院の整備は進まず、私宅監置が続けられていました。

そこで、1950年に「精神衛生法」が作られ、私宅監置が廃止され、都道府県立の精神科病院の設置が義務付けられました。実際、例えば筑波大学がある茨城県であれば茨城県立こころの医療センターのもとの組織が1950年に、埼玉県であれば川口病院と東武脳病院が1952年に、山梨県であれば山梨県立北病院が1954年に、静岡県であれば静岡県精神保健福祉センターのもとの組織が1957年に、開院されています(県に指定された精神科病院があれば県立病院の設置の延期が認められていました)。1950年以降には全国的に精神科病院が作られていきます。

ここから、2つの事件が精神医療の歴史に影響を与えます。

1964年にはアメリカの駐日大使エドウィン・ライシャワーが、日本の精神障害者に刺されてしまい、これは「ライシャワー事件」と呼ばれています。日本の対外的なメンツに関わる大きな問題となり、「精神障害者が野放しにされてる」などと批判が生じました。精神病院はさらに増え続けました。同時に、1965年には精神衛生法が一部改正され、精神障害者をより医療につなげるため「通院医療費公費負担制度」が設けられたのです。
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1984年には精神科病院で患者虐待が行われていたことが発覚し、これは「宇都宮病院事件」と呼ばれています。精神衛生法に代わり1987年に「精神保健法」が作られ、任意入院、精神保健指定医、精神医療審査会など患者の人権に守るための制度が設けられました。

1993年に障害者基本法が作られ、身体障害者や知的障害者とともに精神障害者も障害者として福祉の対象と定められました。そして、1995年に精神保健福祉法が制定され、精神障害者の自立と社会参加の促進が目標とされ、精神障害者福祉手帳が作られました。



今ある日本の精神科医療も当たり前に存在しているのではなく、歴史があって今があるものなんですね。きっとこれからもさらに変わっていくことでしょう。
なお、大きな文字は看護師国家試験で出題されているポイントなので、看護学生は特に把握しておく必要があります。
ラベル:精神科 精神医学
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2017年08月01日

双極性障害へのドパミン作動薬 プロ向き

 双極性障害の治療は炭酸リチウムやバルプロ酸、ラモトリギンなどの気分安定薬で行われます。それでも抑うつ状態が生じることは多いもの。そんなとき、どんな手があるのでしょうか。

 抑うつ状態にある双極U型障害21名を6週間観察し、プラセボで9%、プラミペキソールで60%に改善が得られたという報告(Zarate et al., 2004)、双極性障害22名を6週間観察し、プラセボで20%に、プラミペキソールで67%に改善が得られたという報告(Goldberg et al., 2004)、プラミペキソールで双極性障害の44%に治療反応が得られていたとする報告(Perugi et al., 2001)、双極性うつ病の50%に改善が得られたとする報告(Sporn et al., 2001)があります。まとめて言えば、双極性うつ病にプラミペキソールを使用すると半数で改善が得られると言えるでしょう。

 ただ、躁状態が生じた症例報告があり(Bet et al., 2013)確実に安全とはいえませんし、長期的に有効なのかも不明です。双極性障害の人が抑うつ状態にあるとき、少なくとも数週間の間、プラミペキソールなどのドパミン作動薬を使ってみるのも手かもしれません。
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2017年07月27日

パニック症と妊娠

 パニック症は女性は男性よりも2倍多く、若年女性であれば妊娠する可能性があります。パニック症の人が妊娠したとき、どのようなことが考えられるでしょうか。

 パニック症の人に35%二酸化炭素を吸わせることで61.4%にパニック発作が誘発されるといい(Nardi et al., 2007)、パニック症だと青斑核の二酸化炭素の感受性が亢進してしており、二酸化炭素はパニックを誘発します。そして、妊婦は胎児の成長に伴い肺が押し上げられ呼吸能が軽度低下する傾向にある中、二酸化炭素の量は増え、パニック症が増えることが危惧されます。

 ただ、実際にはパニック症の人が妊娠したとき、43%は改善、33%は悪化、23%は不変だったといい、妊娠中にそこに一定の傾向は無いようです(Northcott & Stein, 1994)。ただ、産褥期には63%が悪化したといい、出産後には一時的に悪化すると考えておくといいでしょう(Northcott & Stein, 1994)。妊娠中にパニック症が新たに発症する率は1.3%といい(Güler et al., 2015)、そう目立って多くは無さそうです。

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 パニック症はSSRIなどの抗うつ薬で治療されるもので、妊娠中のSSRI使用に伴うリスクについて考える必要はありますが、大きなリスクは無い薬。その薬物治療を続けるのであれば、パニック症の人が妊娠したときには、出産直後の一次的な悪化は予測されますが、全体を通してそう心配するものではないのかもしれません。
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2017年06月29日

妊娠中のバルプロ酸

バルプロ酸は、気分安定薬や抗てんかん薬として臨床ではよく用いられる薬です。このバルプロ酸、妊婦にはオススメできません。

妊娠中に1,000mg以上のバルプロ酸を服用していると、そのときの児が3歳になったとき、IQが10以上低くなるといいます(Maedor et al., 2009)。このとき、低用量の低用量のバルプロ酸では低下は目立たず、カルバマゼピンの影響は少ないようであり、ラモトリギンの影響はほぼみられなかったといいます。

また、一般的には1万人に6人ほどの割合で生じる神経管閉鎖不全(二分脊椎や無脳症)が、妊娠第T期のバルプロ酸服用下で出生した児では1.5%に生じるといい(Lindhout & Schmidt, 1986)、バルプロ酸の使用で二分脊椎のリスクは12.7倍になるといいます(Jentink et al., 2010)。

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妊娠の可能性がある若年女性のバルプロ酸の使用は避けた方がよく、使用するとしても量は少ない方がいいようです。ただ、バルプロ酸の摂取で葉酸が低下するといい(Karabiber et al., 2003)、一般的に妊娠の際、葉酸を摂取していると二分脊椎のリスクは低下するといい(MRC Vitamin Study Research Group.1991)、もしバルプロ酸を使わざるをえないのであれば、前もって十分な葉酸サプリメントを併用しておくべきでしょう。


『気分障害ハンドブック』p.179-80でも、二分脊椎のリスクにつき扱われており、参考になります。バルプロ酸の二分脊椎のリスクは、精神科専門医試験にも繰り返し出題されている重要な事項です。

posted by ぷしこノート at 09:12| 精神科ブログ講義 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする