2013年10月09日

統合失調症 DSM-5,DSM-IV,DSM-III,DSM-II,DSM-Iの診断基準

 2013年5月にDSM-5が発表され、DSM-IVとの違いが語られる中で、DSM診断の過去について統合失調症(精神分裂病)の基準で振り返ってみました。
 DSM-IDSM-IIについては日本語訳が見つからず、私自身の訳です。DSM-Iは1952年、DSM-IIは1968年に発表されています。統合失調症の特徴をポイントでおさえて診断する「操作的診断」が試みられたのは1972年のセント・ルイス基準が初めてのこと。そして、1980年に発表されたDSM-IIIで統合失調症のDSM診断に操作的診断が加わりました。


 出発点のDSM-Iから始まり、DSM-II/-IIIを見比べてみると、DSM-5はまだ完璧とは言えずともかなり進歩したものだとは言えそうです。


DSM-I Schizophrenic Reactions

 これは、感情・行動・知性の障害が様々な程度で混在して伴う、現実の関係性と概念の構成の基本的な障害で特徴づけられた、精神病性障害の一群を示す。その障害は、現実離れする強い傾向、感情の不協和、予測のつかない思路の障害、退行した行動、そして人によっては「悪化」の傾向で示される。(訳:@Psycho_Note)
It represents a group of psychotic disorders characterized by fundamental disturbances in reality relationships and concept formations, with affective, behavioral, and intellectual disturbances in varying degrees and mixtures. The disorders are marked by strong tendency to retreat from reality, by emotional disharmony, unpredictable disturbances in stream of thought, regressive behavior, and in some, a tendency to “deterioration.”



DSM-II Schizophrenia

 この大きなカテゴリには、思考・気分・行動の特徴的な障害として表れる一群の障害が含まれている。思考の障害は、現実の誤認、ときには妄想や幻覚、を引き起こすような、それはしばしば心理的な自己防衛として現れる、概念の構成の変化で示される。気分の変化は、両価的な、制約された、そして不適切な感情の反応、そして、他者への共感の欠如が含まれる。行為には、引きこもり・退行・奇妙なものがありうる。
 統合失調症は、基本的に思考障害によって生じる精神状態であり、大気分疾患は気分障害を主としている点で鑑別される。妄想状態は、現実の歪曲が小さく他の精神病症状を欠いている点で統合失調症と鑑別される。(訳:@Psycho_Note)
This large category includes a group of disorders manifested by characteristic disturbances of thinking, mood, and behavior, Disturbances in thinking are marked by alterations of concept formation which may lead to misinterpretation of reality and sometimes to delusions and hallucinations, which frequently appear psychologically self-protective. Corollary mood changes include ambivalent, constricted, and inappropriate emotional responsiveness and loss of empathy with others. Behavior may be withdrawn, regressive, and bizarre. The schizophrenias, in which the mental status is attributable primarily to a thought disorder, are to be distinguished from the Major affective illnesses (q.v.) which are dominated by a mood disorder. The Paranoid states (q.v.) are distinguished from schizophrenia by the narrowness of their distortions of reality and by the absence of other psychotic symptoms.



DSM-III 精神分裂性障害 Schizophrenic Disorders

A. 病相期に,以下のうち少なくとも1項目が存在すること:
 (1)奇異な妄想(内容が明らかに不合理で,実際に根拠があり得ないもの)。例えば被支配妄想,思考伝播,思考吹入,思考奪取のようなもの
 (2)身体的,誇大的,宗教的,虚無的,あるいはその他の妄想で,被害的あるいは嫉妬的内容をもたないもの
 (3)被害的あるいは嫉妬的内容の妄想が,どのような型であれ幻覚を伴っている場合
 (4)幻聴で,ある声が患者の行動や考えを逐一説明するものや,二つ以上の声が互いに会話しているもの
 (5)何度もおこる幻聴で,その内容は気分の抑うつや高揚とはっきりした関係がなく,一,二語より多いようなもの
 (6)滅裂,著しい連合弛緩,著しい非論理的思考,あるいは極めて貧困な内容の会話が,以下のうち少なくとも1項目に伴っている場合:
   (a)鈍麻した,平板な,あるいは不適切な感情
   (b)妄想または幻覚
   (c)緊張病性の,あるいは他のひどくまとまりのない行動

B. 仕事,人間関係,身の回りの始末等の面で,病前の機能水準から低下していること。

C. 持続期間:疾患の徴候が患者の人生のある期間で少なくとも6カ月間以上持続して存在し,現在も疾患の徴候のいくつかを示す。この6カ月間には上記Aの症状を示す活動期が含まれねばならないが,以下に定義する前駆期や残遺期は含むことも含まないこともある。



DSM-IV 統合失調症 Schizophrenia

A. 特徴的症状 以下のうち2つ(またはそれ以上)、おのおのは、1カ月の期間(治療が成功した場合はより短い)ほとんどいつも存在:
 (1)妄想
 (2)幻覚
 (3)まとまりのない会話(例:頻繁な脱線または滅裂)
 (4)ひどくまとまりのないまたは緊張病性の行動
 (5)陰性症状、すなわち感情の平板化、思考の貧困、または意欲の欠如
注:妄想が奇異なものであったり、幻聴がその者の行動や思考を逐一説明するか、または2つ以上の声が互いに会話しているものであるときには、基準Aの症状を1つ満たすだけでよい。

B. 社会的または職業的機能の低下:障害の始まり以降の期間の大部分で、仕事、対人関係、自己管理などの面で1つ以上の機能が病前に獲得していた水準より著しく低下している(または、小児期や青年期の発症の場合、期待される対人的、学業的、職業的水準にまで達しない)

C. 期間:障害の持続的な徴候が少なくとも6カ月間存在する。この6カ月の期間には、基準Aを満たす各症状(すなわち、活動期の症状)は少なくとも1カ月(または、治療が成功した場合はより短い)存在しなければならないが、前駆期または残遺期の症状の存在する期間を含んでもよい。これらの前駆期または残遺期の期間では、障害の徴候は陰性症状のみか、もしくは基準Aにあげられた症状の2つまたはそれ以上が弱められた形(例:風変わりな信念、異常な知覚体験)で表されることがある。

D. 失調感情障害と気分障害の除外:失調感情障害と「気分障害、精神病性の特徴を伴うもの」が以下の理由で除外されていること
 (1)活動期の症状と同時に、大うつ病、躁病、または混合性のエピソードが発症していない
 (2)活動期の症状中に気分のエピソードが発症していた場合、その持続期間の合計は、活動期および残遺期の持続期間の合計に比べて短い

E. 物質や一般身体疾患の除外:障害は、物質(例:乱用薬物、投薬)または一般身体疾患の直接的な生理学的作用によるものではない

F. 公汎性発達障害との関係:自閉性障害や他の公汎性発達障害の既往歴があれば、統合失調症の追加診断は、顕著な幻覚や妄想が少なくとも1カ月(または、治療が成功した場合は、より短い)存在する場合にのみ与えられる



DSM-5 統合失調症 Schizophrenia

A. 以下のうち2つ以上、各々が1ヶ月間(または治療が成功した際はより短い期間)ほとんどいつも存在する。これらのうち少なくともひとつは1か2か3である。
 1.妄想
 2.幻覚
 3.解体した会話(例:頻繁な脱線または滅裂)
 4.ひどくまとまりのないまたは緊張病性の行動
 5.陰性症状(例:感情表出の減少や意欲欠如)

B. 障害の始まり以降の期間の大部分で、仕事、対人関係、自己管理などの面で1つ以上の機能の水準が病前に獲得していた水準より著しく低下している(あるいは、小児期や青年期の発症の場合、対人的、学業的または職業的な期待される水準に達することができずにいる)。

C. 障害の持続的な徴候が少なくとも6ヶ月間存在する。この6ヶ月間には、基準Aを満たす各症状(すなわち、活動期の症状)は少なくとも1ヶ月(または治療が成功した際はより短い期間)存在しなければならないが、前駆期または残遺期の症状の存在する期間を含んでもよい。これらの前駆期または残遺期の期間では、障害の徴候は陰性症状のみか、もしくは基準Aにあげられた症状の2つまたはそれ以上が弱められた形(例:風変わりな信念、異常な知覚体験)で表されることがある。

D. 統合失調感情障害と、うつ病または双極性障害の精神病性の特徴を伴うものが以下の理由で除外されていること
 (1)活動期の症状と同時に、大うつ病または躁病のエピソードが発症していない
 (2)活動期の症状中に気分のエピソードが発症していた場合、それらは疾患の活動期および残遺期の持続期間の半分以下しか存在しない。

E. 障害は、物質(例:乱用薬物、投薬)または他の医学的状態の直接的な生理学的作用の影響によるものではない。

F. 自閉スペクトラム障害やコミュニケーション障害の小児期の既往歴があれば、統合失調症の追加診断は、統合失調症の必須症状に加えて顕著な幻覚や妄想が少なくとも1ヶ月(または治療が成功した際はより短い期間)存在する場合にのみ与えられる。
(訳:@Psycho_Note)


DSM-5の詳細については「統合失調症(統合失調症スペクトラム)の基準 DSM-5」をご覧ください。
posted by とある精神科医 at 18:29| 診断基準 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月29日

睡眠に効くアミノ酸

睡眠に効果のあるアミノ酸のサプリメントとして、グリシンとテアニンの2つが考えられます。この2つについて機序も含めて考えてみました。

アミノ酸のグリシン、これを寝る前に沢山摂取すると睡眠を促すといいます。グリシンは、記憶・学習に関わるNMDA型グルタミン酸受容体に作用します。そして同時に末梢では入眠時の熱放散を促し深部体温を下げます。眠くなると手が温かくなるあの現象です。これを多く摂取することで睡眠への効果が得られます。非必須アミノ酸であり、当たり前に体内に存在しているアミノ酸です。グリシンのサプリメントの摂取により、寝入るまでにかかる時間(入眠潜時)が短くなり、深睡眠の時間が増え、全体的に睡眠の質が向上したといいます。



お茶に含まれるアミノ酸のテアニンは、グルタミン酸に類似した物質でありNMDA型グルタミン酸受容体に作用し、中途覚醒が減少し睡眠効率が改善し、起床時の疲労回復感や睡眠時間延長感も改善したとする報告があります。また、脳由来神経栄養因子(BDNF)を増やすことも期待でき、さらに睡眠中に起きやすい一時的な脳虚血から脳神経を保護することも期待できます。

posted by とある精神科医 at 19:38| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月17日

DSM-5の日本語版

精神科の診断基準DSM-5を日本語版が2014年6月下旬に発売となりました。DSM-IVから大きく変わったわけではなくとも、変更された点は少なくありません。精神科に関わる医療者であれば、いずれにせよ知っておかなければいけないことばかり。必ず一冊は必要になることでしょう。




こちらは英語版。

posted by とある精神科医 at 19:08| 診断基準 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月12日

トラウマとストレスに関する障害 DSM-5

診断基準DSM-5のトラウマとストレスに関する障害群の章を日本語訳しました。この章には以下のものを含んでいます。

・反応性愛着障害 Reactive Attachment Disorder
・脱抑制性社交障害 Disinhibited Social Engagement Disorder
・心的外傷後ストレス障害 Posttraumatic Stress Disorder
・6歳以下の心的外傷後ストレス障害 Posttraumatic Stress Disorder for Children 6 Years and Younger
・急性ストレス障害 Acute Stress Disorder
・適応障害 Adjustment Disorder

DSM-5トラウマとストレス.pdf

DSM-IVでは適応障害はそれだけで1つの章として扱われ、PTSDが不安障害に含まれていました。その他も含めてこれらがひとつのグループで扱われるのは納得させられるものがあります。
posted by とある精神科医 at 19:49| 診断基準 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月07日

物質関連と嗜癖の障害 DSM-5

DSM-5物質関連と嗜癖の障害の章を日本語訳しました。
DSM-IVにおける乱用依存が「使用障害」として統合されました。乱用の4項目のうち、違法性を問う項目を削除した3項目+依存の7項目+摂取欲求についての1項目を合わせた計11項目で診断することになりました。
DSM-IVの依存症は3項目以上を満たしたものを診断しましたが、DSM-5の使用障害は2項目以上満たせば診断に至ることになり、以前よりも診断が広がっているといえるでしょう。

下記の【物質】にはアルコール、カフェイン、大麻、幻覚剤(フェンザイクリジン、他の幻覚剤)、吸入剤、アヘン類(オピオイド)、鎮静薬(睡眠薬または抗不安薬)、覚醒剤、タバコ、その他(または未知)などの特定の物質名が入ります。原著では、個々が別々に扱われています。物質により、物質の特性に合わせて基準にわずかに違いが生じています。詳細についてはPDFのファイルをご覧ください。
当ブログで扱っているDSM-5の日本語訳は、正式な日本語版が生じるまで英語版を読む際の補助資料とお考えください。

DSM-5物質と嗜癖.pdf

【物質】使用障害 Alcohol Use Disorder DSM-5

A.臨床的に重大な障害や苦痛を引き起こす【物質】使用の不適応的な様式で、以下の2つ以上が、同じ12ヶ月の期間内のどこかで起こることによって示される。

1. 【物質】をはじめのつもりよりも大量に、またはより長い期間、しばしば使用する
2. 【物質】を中止、または制限しようとする持続的な欲求または努力の不成功のあること
3. 【物質】を得るために必要な活動、【物質】使用、または、その作用からの回復などに費やされる時間の大きいこと
4. 【物質】の使用に対する渇望・強い欲求または衝動
5. 【物質】の反復的な使用の結果、仕事・学校または家庭の重大な役割義務を果たすことができなくなった。
6. 持続的あるいは反復的な、社会的なまたは対人関係の問題が【物質】の影響により引き起こされたり悪化したりしているにもかかわらず【物質】使用が持続
7. 【物質】の使用のために重要な社会的、職業的または娯楽的活動を放棄、または減少させていること
8. 身体的危険のある状況で【物質】を反復使用する
9. 精神的または身体的問題が、【物質】によって持続的または反復的に起こり、悪化しているらしいことを知っているにもかかわらず、【物質】使用を続けること
10. 耐性、以下のいずれかによって定義されるもの:
 a.中毒または期待する効果に達するために、著しく増大した量の【物質】が必要
 b.同じ量の【物質】の持続使用で効果が著しく減弱
11. 離脱、以下のいずれかによって定義されるもの
 a.【物質】に特徴的な離脱症候群がある(【物質】離脱の基準AとBを参照)
 b.離脱症状を軽減したり回避したりするために、【物質】(または密接に関連した物質)を摂取する

該当すれば特定せよ:
・早期寛解にあるもの In early remission:以前に【物質】使用障害の基準を完全に満たし、その後に【物質】使用障害の基準(A4「【物質】の使用に対する渇望・強い欲求または衝動」以外)のいずれも満たさない時期が3ヶ月以上12カ月未満の間あったもの
・持続した寛解にあるもの In sustained remission:以前に【物質】使用障害の基準を完全に満たし、その後に【物質】使用障害の基準(A4「【物質】の使用に対する渇望・強い欲求または衝動」以外)のいずれも満たさない時期が12ヶ月以上あったもの。

該当すれば特定せよ
・管理された環境下にある In a controlled environment:この付加的な特定用語は【物質】の使用が制限された環境にいる人に用いられる。

現在の重症度を特定せよ:
・軽度 Mild: 基準の2つか3つを満たす
・中等度 Moderate: 基準の4つか5つを満たす
・重度 Severe: 基準の6つ以上を満たす
posted by とある精神科医 at 14:58| 診断基準 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする